本日の産経新聞朝刊に、企業メセナ協議会・福地理事長の記事が掲載されました。GBFund、企業メセナについて。以下、msn産経ニュースより。
■企業に欠かせぬ文化支援
東日本大震災を受け、私が理事長を務める「企業メセナ協議会」では3月下旬、被災された地域や人々のための「東北関東大震災 芸術・文化による復興支援ファンド」を設立した。公益社団法人である当協議会は、企業が芸術や文化を支援する「メセナ」の普及を通じ、豊かな社会づくりを目指してきた。その経験から私たちは、未曽有の大震災にあっても芸術・文化が人々の心を支え、未来への希望をつなぎ、地域を再生する上で大きな力を持つものと信じている。
被災地に必要な支援は、物資だけでない。避難所での音楽や朗読、パフォーマンスやワークショップ、被災地固有の伝統芸能や文化活動の継承、損壊した作品の修復…。このファンドは、人々の心に届き、やがて地域再生の契機となるようなこうした活動への支援を、企業や個人の寄付で行おうとするものである。
これまでに集まった寄付により、5月下旬までに25件の活動支援を行った。阪神大震災(平成7年)の経験でも心に対する支援の重要性が示されている。復興は長期にわたるため、支援の輪を広げていきたい。
3年前の経済危機でも当協議会は、地域再生には文化への投資が鍵になるとする政策提言「ニュー・コンパクト」を発表している(21年3月)。芸術や文化から得られる心の豊かさは一見、経済再生からは遠く、別次元のものと思われるかもしれない。しかし、文化は社会を形成する人々の知恵の総体であり、経済再生を含めた社会創造への、力の源泉となるはずである。
同じことはまた、企業自身の経営にも当てはまる。以前、雑誌の対談企画に備えて世阿弥「花伝書」の解説書を読んだことがある。「程度の低い観客に気に入られないのは観客のせいではあるが、役者が本当の名人ならば、観客に合わせ、分かりやすく能を演じるだろう」という趣旨のくだりを読み、「これは経営でいうお客さま本位とまったく同じことだ」と痛感した。世阿弥から600年の時を超え、今も能が受け継がれているのは、こうした哲学が生きているからではないだろうか。
また、優れた芸術は目に見えないところに力を入れるが、日本製品の品質の良さもまさに、見えないところにきちんと手が入っている点にある。芸術に学ぶところである。
このように、企業がメセナという「かたち」を通じて文化や芸術に関わり、そこに「こころ」を込めていくことは、企業自身の成長のためにも大切であることは疑いない。
実際に、さまざまな工夫を凝らしたメセナ活動が無数に存在する。資金支援のみならず、技術・ノウハウや人材の提供、芸術文化を取り巻く市民や地域のネットワーク形成などがある。それらは企業が培ってきた独創性と社会性があるからこそ実現し、豊かな社会の創造に資する。もはや社会貢献といったレベルではなく、CSR(コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティー)、つまり企業が果たすべき社会的責任として捉えられるものだと思う。
メセナ活動は、企業の製品ブランドの向上に直結することは考えにくいが、活動を続けることで消費者の好感度の向上につながり、やがては、企業ブランドをも高めるものと確信している。(ふくち しげお)