GBFund (ジービーファンド、G:芸術、B:文化、F:復興/ファンド)は、 2011年3月23日に企業メセナ協議会が立ち上げた芸術・文化による復興支援ファンドです。趣旨に賛同くださった寄付者とともに、今後5年間、被災者・被災地を応援する目的で行われる芸術・文化活動や、被災地の有形無形の文化資源を再生する活動を支援してまいります。

本日6/11付毎日新聞に福地理事長のインタビュー記事掲載「震災被災地での文化振興、どう考える?」

本日の毎日新聞朝刊に、企業メセナ協議会・福地理事長のインタビュー記事が掲載されました。GBFund、文化復興について語っています。以下、毎日jpより。
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「急接近:福地茂雄さん 震災被災地での文化振興、どう考える?」 
<KEY PERSON INTERVIEW>
 公益社団法人・企業メセナ協議会は東日本大震災発生直後に「東日本大震災芸術・文化による復興支援ファンド(GBFund)」を設立し、被災地などでの活動に助成を続けている。文化復興への考えを、福地茂雄理事長に聞いた。【聞き手・鈴木敬吾】

◇共同体の絆、助成を早く--企業メセナ協議会理事長・福地茂雄さん(77)

--被災地などでの芸術文化活動に対し、既に4月に11件、5月に14件の助成をしています。すばやい対応でした。

◆ ビール会社の時代、そしてNHKの時も、絶えず言っていたのが「より早く、もっと速く」でした。今回も同じです。
 未曽有の災害に見舞われた被災地の人たちは、いわば土砂降りの雨に打たれています。芸術文化による地域再生を主張してきた私たちが黙って見ているわけにはいきません。傘が必要です。小さくても破れ傘でも、まず支援の傘を差し出さなくては。「傘をください」と声を上げる前に、こちらから「傘はどうですか」と声をかける。そのスピードが必要だと考えました。

--芸術文化の支援が傘になると。
◆ それぞれの地域の自然、歴史、食べ物、祭り、建築物。そうした文化は、人をつなぐ共同体の絆です。その文化がまさに流されてしまった。どう受け継いでいくか考えなくてはなりません。そして、そこでの新たな芸術文化の営みこそが人の心を支え、未来への希望をつなぎます。
 被災地では、当初の混乱が収まり、心のかわきを感じる人が増えているはずです。しかし、地元の自治体に人や予算を芸術文化に向ける余裕はないでしょう。これまで2回、計25件の助成総額は1080万円で、1件あたりは決して多額ではありません。しかし、現地の事情を一番よく知るアーティストやNPO(非営利組織)の声に応えることで、その人たちの背中を押してあげることにはなったと思います。
 「どれだけ勇気づけられたか分かりません。応援してくれる人がいると思えること自体が力になります」という感謝の声が届いています。

--震災後、しばらくの間、芸術文化を楽しむことが後ろめたいと感じさせるような雰囲気が日本全体にありました。
◆ 安全確保が不安な期間もあったし、被災地の悲嘆に寄り添って、共に受けとめる時間も必要だったでしょう。しかし、芸術文化にとどまらず、人が集まるイベントはことごとく中止という時期がありました。大反対です。
 この社会は、それぞれの人がそれぞれのなりわいを果たすことによって成り立っています。全部が自粛していたら、復興支援どころか、社会全体が大変なことになってしまいます。
 館長をしている東京芸術劇場と、運営財団理事長を務める新国立劇場にも「自信を持ってやりなさい」と早期の公演再開を指示しました。
 芸術文化の催しを、むやみに自粛したがるのは、いまの日本が恵まれているからでしょう。水や空気と同じで、芸術文化もあって当たり前と思っている。飢えた経験がない。確かに芸術文化がなくても、人間は生きていけます。でも、それでは、人間らしく生きることはできない。芸術文化は人間が人間らしく生きるための必需品です。
 被災地では、「あって当たり前」ではありません。芸術文化に飢えを感じる人が増えるでしょう。だから、ファンドが必要なのです。

◇経済のみの再生は愚策


--震災とその後の原発災害を契機に、「国づくりのあり方が問われている」と言われ、さらに「国民一人一人の生活、価値観の転換」の必要性が指摘されています。

◆ 豊かさとは何かということでしょう。企業メセナ協議会は09年3月、「ニュー・コンパクト」という政策提言を発表しました。経済再建策のみで社会再生を図るのは愚策の反復で、自然や歴史を生かしてコンパクトな社会を生み出す、文化による社会創造を求めた提言です。
 リーマン・ショック後の経済的落ち込みを受けた提言で、文化に携わる人たちからは高い評価を受けました。私も全国知事会などへ説明に回りましたが、政権交代後の混乱の中で埋もれてしまいました。被災地復興を含め、今こそ、この提言を実践していくべきだと強く考えています。芸術文化こそが、心に豊かさを与えてくれ、豊かな創意工夫を生んでくれるのですから。

--ファンドへの理解は広がっていますか。
◆ 企業・個人を問わず、幅広く寄付を募っています。公益社団法人のため、税制上の優遇措置もあるので、同じような支援活動をするNPOへの寄付金の受け皿になることも可能です。幸い多くの方からの申し出もいただいていますが、当面、早く1億円を集めたい。そのためにトップセールスもします。早さも大切ですが、5年程度の継続は必要だと考えています。

--芸術文化は多様です。

◆ 50年、サラリーマンで企業経営に携わってきて、引退かと思ったら、70代で文化の分野に転身できたのは幸せでした。音楽、オペラ、演劇、ダンス、そして幅広い「アート」。最初は「えっ」と思うものもありましたが、入っていけば、みな素晴らしいものばかりでした。自分の物差しは捨てました。

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■ことば
◇企業メセナ協議会
企業によるメセナ活動の活性化を目的に1990年に発足し、日本を代表する企業など172社・団体が加盟。GBFundは被災者・被災地を応援する芸術文化活動、有形無形の文化資源を再生する活動を支援する。問い合わせは同協議会(03・3213・3397)へ。
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■人物略歴
◇ふくち・しげお
長崎大経済学部卒。アサヒビール社長、会長を経て現在相談役。この間、08年から今年1月まで第19代NHK会長を務めた。東京芸術劇場館長で、4月からは新国立劇場運営財団理事長にも就任した。