GBFund (ジービーファンド、G:芸術、B:文化、F:復興/ファンド)は、 2011年3月23日に企業メセナ協議会が立ち上げた芸術・文化による復興支援ファンドです。趣旨に賛同くださった寄付者とともに、今後5年間、被災者・被災地を応援する目的で行われる芸術・文化活動や、被災地の有形無形の文化資源を再生する活動を支援してまいります。

GBFund第1回助成活動「“生きる”博覧会2011」から5/11黙とう集会の報告が届きました

GBFund第1回助成活動「“生きる”博覧会2011」から、震災後2か月の5/11に開催された黙とう集会「5.11南三陸の海に思いを届けよう」(主催:envisi、共催:南三陸町)の報告が届きました。「メセナnote68号」に掲載された「きりこプロジェクト」のレポートを書いてくださった吉川由美さんからです。
「ご支援いただいているみなさまにくれぐれもよろしくお伝えく ださい」とのメッセージが添えられていました。ぜひお読みください。
       

南三陸町におけるアートによる復興支援 報告書

2011.5.14
ENVISI 代表 吉川 由美

 震災直後の3月22日から、私たちは食糧・物資支援を中心に、避難されているみなさん、被災しながら役場で自らを省みず泥のように働いているみなさんと、ひととき会話のある安らぎの時間をつくる「南三陸ライフカフェ」を町内各所で行いました。
 私たちは宮城県で、山や海、まちでのさまざまな人間の営みをアートを通して見つめ直す“生きる”博覧会というアートプロジェクトを行ってきました。その際に、末期ガンの患者さんに最期の時まで在宅で生き抜いてもらうための取り組みを行っている大崎市の穂波の郷クリニックの人たちと出会いました。彼らと行ったのが「ライフカフェ」です。クリニックでは毎週火曜日に、地域の人たちと“生きる”楽しさを共有するさまざまな試みを行う「ライフカフェ」を続けるようになりました。
 今回の南三陸支援に当たっては、穂波の郷クリニックのドクター、ソーシャルワーカー、緩和ケアコーディネーターなどのスタッフと協働で、約10回のライフカフェを開催してきました。そのほか、ロバート・キャンベル氏による短いお話会も開催したり、地元の商店会が企画運営している福興市の実行委員会に参加させていただき、ロゴや宣伝ツールのデザインなどのお手伝いも行ってきました。

 刻々と変わる現地の状況、町民のみなさんの心持ちを鑑みながら、私たちの活動も微妙に変化を遂げて行かなくてはなりませんでした。そして、みなさんの心にひっかかっていることをお聞きすることができました。
 帰らぬご家族のご遺体を待っておられるみなさんが、なかなか心の整理をつけられずに、生活再建への意欲を持てないまま、避難所で身動き撮れなくなっているがどうしたら次のきっかけを作れるのかわからないという悩みを現場でお聞きしました。また、集団避難で町を離れたみなさんにあっては、たいへん心細く、町への心の絆をつないでいく精神的な支えが必要だとも感じました。
さらに、大型連休には、たくさんの芸能人、有名人、全国からの炊きだしボランティアなどが押し寄せ、町はロックフェスティバルのようなありさまでした。
 町の人たちが悲しみに向き合い、自分自身の心を静かに見つめながら心の整理をするいとまは、まったくないようにお見受けしました。

 そこで、私たちは5月11日から、公式な慰霊祭が行われるまで、毎月11日には、町の人たちが悲しみを共有し静かに自分自身に向き合える時間を作るお手伝いをしていこうと考えたのです。
 これまで何度も一緒に舞台を創ってきた仲間でもある、朗読家 渡辺祥子氏、声楽家 鈴木美紀子氏、ギター奏者 佐藤正隆氏にお願いし、歌と言葉の力でひとりひとりが自分自身に向き合える時間を、創り出すことにしました。会場は志津川地区を一望できる志津川中学校です。3月11日、多くの人たちがたった5分の間に、町のすべてが津波で失われていく光景を見ていた場所でもあります。てのひらのなかに燃えるキャンドルの小さな灯火のあたたかさを感じながら、もう一度、その同じ場所に立って、すべてがなくなった街を見つめることは、現実を直視することでもあります。そのきびしい時間を、鈴木氏の卓越した技術に裏打ちされたやさしく透明感のある歌声と、渡辺氏の言霊を伝える朗読力で、前向きな時間に転化していくこと。それこそ、アートだけができることであると信じて、全体の構成を考えました。海の見える場所に並んだみなさんの背後から、鈴木氏のやさしく心をいやすような歌声が海に向かって流れていくように演出しました。
 また、南三陸の海を、遠く離れた町でふるさとに帰る日を心待ちにしているみなさんのために、同じ時間に共有する場を創り出そうと、南三陸町志津川中学校で行われた集会の模様を、5市町の7箇所にUst中継しました。中継については、アサヒ・アート・フェスティバルのネットワークの、京都、船橋、別府、仙台、大崎市の仲間たちが力を貸してくださいました。ラインINの音声を中継したので、現場での立体感や臨場感までは伝わりませんでしたが、すばらしい技術者にご協力していただき、たくさんの方々にご覧いただくことができました。
 中継に関するコーディネートやスタッフアレンジは、門脇篤まちとアート研究所  門脇篤氏が行ってくださり、仙台、大崎、鳴子、船橋、京都から駆けつけたみなさんがお手伝いしてくださいました。中継はメディアゲート・ジャパンとUstTodayのみなさんのご協力で、iPhoneでの視聴もできるようにしていただきました。当日はUstreamのトップ画面にバナーを貼るご協賛もいただき、リアルタイムで600台の視聴をキープできました。
 運営に当たっては、産業復興支援で現地入りしているユナイテッド・アースのみなさんにも協働していただきました。大きく広がった人々の輪が、この集会を支えることになったのです。
大切な方を亡くされた方々、すべてを失ったみなさんおひとりおひとりが、自分自身の心に向き合う時間をつくるということ、集団避難されたみなさん方の心をつなぐということを、私たちのミッションとして、行ったこの企画。その両方を実現することができたと自負しています。

 志津川中会場の人たちは海を見ながら、キャンドルを持って立ち尽くしていらっしゃいました。キャンドルは亡くなった方の魂と感じた方もいらっしゃるでしょうし、ご自分の心と思った方もいらっしゃることでしょう。
 志津川中学校の子どもたち、現地で活動している沖縄からの自衛隊第15旅団も全員で参加してくださいました。町の人たちはいつまでもいつまでも海をご覧になっていました。キャンドルは後者の前の堰堤に夕刻まで灯しました。
 中継された7会場(登米市登米公民館 大崎市鳴子中央公民館 大崎市中山平仙庄館 加美町中新田交流センター 栗原市伊豆沼ウェットランド交流館 南三陸町ベイサイドアリーナ 同町ホテル観洋)にお集まりになったみなさんも食い入るように画面を見つめておられました。

○ 出演
朗読・進行  朗読家 渡辺祥子
声楽家    鈴木美紀子
ギター奏者 佐藤正隆

○協力   門脇篤まちとアート研究所  門脇篤
   コミュニティアートふなばし  下山浩一
   東鳴子ゆめ会議  大沼伸治
   太田倫子
   せんだいメディアテーク 清水チナツ
   穂波の郷クリニック 大石春美 ほかスタッフのみなさん
   宮城大学    平岡善浩
   アートNPOリンク  樋口貞幸
   藤井 光
   アートNPOエイド  宮浦宜子
   別府レッグウォーマーず 海老由佳子
  株式会社メディアゲート・ジャパン 栗原大介
  株式会社東北共立
  社会貢献共同体ユナイテッド・アース 

○協賛   Ustream
○助成   アサヒ・アート・フェスティバル(AAF)ネットワーク活動支援募金
      企業メセナ協議会「芸術・文化による震災復興支援ファンド」
○主催   ENVISI
○共催   南三陸町福興市実行委員会
○ プログラム
14:45 開会  
14:46 黙祷
14:47 町長挨拶
14:52 詩の朗読
14:57 海に思いを届けよう《♪鈴木美紀子(声楽家) 歌 佐藤正隆(ギタリスト)  伴奏  》
    東日本大震災の犠牲になったみなさまに私たちの思いを届けます。
15:07ころ 閉会のあいさつ  南三陸福興市実行委員会 山内正文氏
15:10    全国から南三陸町のみなさんへのメッセージ
15:15ころ 終了   《進行 渡辺祥子(朗読家) 》

○ 参加人数
志津川中学校  500人
登米市登米公民館 20人
大崎市鳴子中央公民館 170人
大崎市中山平仙庄館 50人
加美町中新田交流センター 25人
栗原市伊豆沼ウェットランド交流館 20人
南三陸町ベイサイドアリーナ 50人
同町ホテル観洋  30人

○ Ustream中継視聴数/600人台(http://www.ustream.tv/recorded/14623390にて視聴可
※会が始まる 10分程前から始まっていますので10分程送ってご覧ください)

○ ENVISI Web Site 当日ページビュー数/1300
○取材していただいた各社
河北新報 読売新聞 朝日新聞 日経新聞 産経新聞 共同通信社 時事通信社 熊本日日新聞
NHK NHKラジオ TBS KHB 仙台放送 長崎放送 テレビ東京 三陸新報 大崎タイムス

■ 志津川中学校  
  

  

■ 鳴子中央公民館


















■ 中新田交流センター


















こちらの皆さんの身動ぎもせず画面を見つめる姿の、あの故郷の今を見たいという切なる思いに圧倒されました。
音楽を通してのメッセージに聞き入る人、海に向かうカメラに、ともに歩いているかのように身をのりだす人、壁時計を振り返り、今頃(波が)来た時間と目を押さえる人・・・
それぞれに同じ時間を共有されていました。テレビ電話で笑みがやっとこぼれ、終了してもすぐに動く人もなくおもむろに部屋に戻られていました。
元気に動き回る人、じっとしている人・・姿はそれぞれでも流れる思いは繋がっている事を深く感じました。自分らしく受け止められていたように伝わりました。静かな時が流れていた気がします。夕方6:30、工藤真弓さん(上山八幡宮の宮司さんのお嬢さん)のお話から始まりキャンドルに火を灯しました。背を丸めて灯す姿は鎮魂の姿そのものでした。 (ENVISI 早坂のレポートより) 



















■ 伊豆沼ウェットランド
















■ 翌日の沖縄タイムス1面

(2011/5/18)